交通事故で『脊髄損傷』に?後遺障害の立証方法や慰謝料(まとめ)
目次
たとえ万全を期していても、交通事故に巻き込まれる可能性はゼロではありません。そして、その交通事故によっては「脊髄損傷」を起こす可能性もあります。ここでは脊髄損傷とは何かをはじめ、その症状や後遺障害認定、慰謝料などについて解説をします。
■脊髄損傷とは?
脊髄損傷とは、脊髄が傷つく怪我を意味します。この脊髄は、脳から骨盤まで伸びている脊柱管の中にある中枢神経のことです。この神経は、触覚や温痛覚を伝える役割があったり、運動の指令を伝える役割を持ったりしているため大変重要な部分となっています。
この脊髄は部位によって頚髄(けいずい)や胸髄(きょうずい)、腰髄(ようずい)、仙髄(せんずい)などに分かれます。脊髄損傷は、基本的に交通事故により脊椎(せきつい)や頸椎(けいつい)を打撲、骨折することによって、脊柱管(せきちゅうかん)にその衝撃が加わることで後遺症となる可能性があります。そのため、診断書などには「頚髄不全損傷」や「中心性頚髄損傷」、「腰髄損傷」など、損傷部位が書かれることが一般的です。
脊髄損傷はその損傷の程度により、日常生活に支障をきたさない程度のものから、就労困難なものまであります。現在の医療では治療は困難とされており、生涯に渡り手足のしびれを抱える重い後遺症です。
■脊髄損傷の症状
脊髄損傷の症状は大きく2つに分かれます。それが「完全損傷」と「不完全損傷」です。これらの違いについて説明をします。
完全損傷(完全麻痺)
完全損傷(完全麻痺)は、末梢神経までの神経伝達が完全に断たれてしまう損傷のことを指します。損傷部位以下へは神経が届かないため、動かすことができません。もちろん、末梢神経から脳まで神経伝達ができないため、温度や痛みを感じることもありません。そのほか、自律神経系も損傷が加わっていることから、体温調節・代謝をすることも不可能です。
不完全損傷(不全麻痺)
不完全損傷(不全麻痺)は、完全には末梢神経までの神経伝達が断たれていない損傷のことを言います。損傷部位にしびれを感じ、損傷の程度により動かすことも可能です。
■交通事故による脊髄損傷での後遺障害等級
交通事故で脊髄損傷を負ってしまった場合、「自賠法施行令(自動車損害賠償保障法施行令)」によって後遺障害認定を受けることができます。この後遺障害とは交通事故によって起きた後遺症のうち、自賠法施行令の定める基準を満たしたものをいいます。そのため、病気や怪我が治った後にも残ってしまう後遺症とは意味合いが異なるので注意をしましょう。
そして、この後遺障害認定は1級~14級に分かれており、等級ごとに「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」の補償内容が異なるのです。脊髄損傷の場合は7つの等級に分かれているので、それぞれの違いを押さえておきましょう。
後遺障害認定等級 | 後遺障害認定の認定基準 |
後遺障害等級1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの(要介護) |
後遺障害等級2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの(要介護) |
後遺障害等級3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの |
後遺障害等級5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
後遺障害等級7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
後遺障害等級9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
後遺障害等級12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
■脊髄損傷の後遺障害認定ポイント
脊髄損傷の認定は、その損傷具合と損傷範囲によって決まります。また、介護の有無・程度によっても認定される内容が異なります。そこで脊髄損傷の認定を受けるに当たり、その判断基準を見ていきます。
麻痺の範囲
脊髄損傷によって起きた麻痺の範囲は、4つに分類することができます。
麻痺 | 麻痺の範囲 |
四肢麻痺 | 左右両方の上下肢が麻痺 |
片麻痺 | 左右どちらかの上下肢が麻痺 |
単麻痺 | 左右どちらかの上肢もしくは下肢が麻痺 |
対麻痺 | 両上肢もしくは両上肢が麻痺 |
こうした麻痺の範囲は、頚髄や腰髄など、その部位によって起きる麻痺に傾向があります。例えば、頚髄損傷の場合は四肢麻痺、胸髄・腰髄損傷では片麻痺と言った具合です。この麻痺の範囲が広いほど、障害の度合いが高いとされます。
麻痺の程度
脊髄損傷によって起きる麻痺の程度は、3つに分類することが可能です。
麻痺 | 麻痺の程度 |
高度の麻痺 | 運動性・支持性がほとんど失われている |
中程度の麻痺 | 運動性・支持性が相当程度失われている |
軽度の麻痺 | 運動性・支持性が多少失われている |
高度の麻痺では完全強直状態にあり、基本動作を取ることに困難をきたします。自分で四肢を動かすことができない場合に、この高度の麻痺と認定されます。
また、中程度の麻痺では基本動作に制限がかかっています。そのため、軽いものしか持てなかったり、補助器具がないと歩行や、階段を上ることができなかったりする場合に、中程度の麻痺と認定されます。
そして、軽度の麻痺では基本動作の巧緻性(手先の器用さなど)および速度が相当程度失われています。字を書くのが遅かったり、転倒の恐れがあったりする場合に軽度の麻痺として認定されます。
介護の有無とその程度
脊髄損傷の程度によっては、介護が必要になることもあるでしょう。こうした介護の有無・介護の程度も後遺障害の認定では必要なことになります。もちろん、介護の必要度合いが高いほど、後遺障害認定では高い級が認定されるようになるのです。
■脊髄損傷による後遺障害の立証方法
脊髄損傷は脊柱の骨折に伴うことが多いため、基本的には認定されやすい怪我です。しかし、中には脊柱に外傷が見られないために、脊髄損傷と分かりにくいものもあります。その結果、重度の障害であるにもかかわらず、14級などの軽い等級扱いを受けたり、後遺障害認定を受けられないなどのケースがあるのです。そのため、正しく脊髄損傷の認定してもらう必要があります。
- ①レントゲン、MRI等で脊髄損傷の確認を取る
- ②各種神経症状テストを実施し、症状を記録する
- 反射テスト
- 徒手筋力テスト
- 筋萎縮検査
- 知覚検査
- 手指巧緻運動検査
こうした各種検査等を行い、医師が「頚髄不全損傷」などと診断することで、脊髄損傷を立証することができます。ただし、こうした検査方法は医療機関や担当医師によって異なります。そのため、高度な医療設備をそろえており、脊髄損傷の専門医がいる病院にて診察を受ける方が後遺障害を立証しやすいでしょう。
■脊髄損傷で受け取れる慰謝料の金額は?
脊髄損傷の後遺障害認定が認められたら、どの程度の慰謝料をもらうことができるのでしょうか?この慰謝料は、どの基準を採用するかによっても異なります。ここでは参考として弁護士基準(※)にて見ていくこととします。
後遺障害認定をされた等級 | 弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
後遺障害等級1級認定を受けた場合 | 2,800万円 |
後遺障害等級2級認定を受けた場合 | 2,370万円 |
後遺障害等級3級認定を受けた場合 | 1,990万円 |
後遺障害等級4級認定を受けた場合 | 1,400万円 |
後遺障害等級5級認定を受けた場合 | 1,000万円 |
後遺障害等級9級認定を受けた場合 | 690万円 |
後遺障害等級12級認定を受けた場合 | 290万円 |
※後遺障害慰謝料には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の三つがあります。詳細はこちら:弁護士に依頼すれば示談額が増える訳(3種類の慰謝料支払い基準)
このように脊髄損傷の慰謝料は認められた等級ごとに異なります。また、後遺障害等級が認められれば、等級によって逸失利益を得ることもできるのです。この逸失利益は、交通事故によって失われた将来の給料の対価としてもらえるお金です。
ただし、これらはあくまで目安です。過失の度合いなどによっても慰謝料の金額は変わることもあります。そのため、慰謝料を請求する際には弁護士に依頼する方がいいでしょう。
■まとめ:脊髄損傷と後遺障害認定
脊髄損傷による後遺障害認定について見てきました。後遺障害等級によって、受け取れる慰謝料や逸失利益の額が大きく変わります。そのため、もし交通事故により脊髄損傷を負った場合には、正しく認定してもらえるように医療機関で診断をしてもらうようにしましょう。また、間に弁護士が入ることで、後遺障害慰謝料を請求できるよう必要な事項をおさえた診断書を医師に書いてもらう必要もあります。交通事故に強い弁護士に依頼することで、解決できることは多々あります。
交通事故で脊髄損傷などによる後遺障害認定でお悩みの方は、当事務所までご連絡ください。無料相談も行っておりますので、まずは一度、お電話かメールにて、ご予約ください。
埼玉県越谷市だけでなく、周辺の川口市、春日部市、草加市、吉川市、三郷市、八潮市、千葉県流山市、松戸市、東京都足立区など、また周辺の方からもお問い合わせを受け付けております。交通事故による後遺障害慰謝料問題は早期弁護士相談がカギとなりますので、悩まずご相談ください。
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