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交通事故で『遷延性意識障害』?後遺障害認定と慰謝料(まとめ)

遷延性意識障害交通事故のイメージ

ひとたび交通事故に巻き込まれたら、大けが・重症を負ってしまうこともあるでしょう。そんな大けがの一つに「遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)」があります。
患者さんが交通事故などでこの遷延性意識障害になると、本人はもちろん、家族にも多大な支障が生まれます。そこで、ここではこの病気の症状や、後遺障害認定、等級、その立証方法などについて説明をしていきます。

 

■遷延性意識障害とは

 

この遷延性意識障害とは、意識不明のまま寝たきり状態になる症状のことをいいます。一般的には、「植物状態」として認知されている病気です。

 

遷延性意識障害は、交通事故などにより頭部・脳に大きなダメージを受けることで発症する症状です。発症後は、基本的に患者さんは昏睡状態に陥り、意思疎通が一切できなくなってしまいます。仮に、患者さんが開眼をしても、自分の意思で体を動かすことができません。そのため、介護が必須の後遺症として知られています。

 

また、家族に遷延性意識障害の方がいる場合、その家族にも影響が出ます。なぜなら、介護のために時間やお金、体力などを要するからです。つまり、家族にも多大な影響を与える病気なのです。

 

もし遷延性意識障害になってしまうと、現代医療では残念ながら回復を見込むことが難しいです。もちろん、その程度により回復する事例もあります。しかし、基本的には現状維持の治療がおこなわれることになります。

 

■遷延性意識障害の症状

 

遷延性意識障害の症状は、昏睡状態で意思疎通を取ることができない状態をいいます。この症状を日本脳神経外科学会では、以下のように定義しています。

 

  • 自力で移動することができない
  • 発声できても、意味のある発語ができない
  • 簡単な命令に反応できるが、それ以上の意思疎通ができない
  • 眼球はかろうじて動いているが、認識できない
  • 自力で摂食することができない
  • 失禁がある

 

以上の6つの状態が3か月以上、継続して起きている場合に「遷延性意識障害」と診断されます

 

■遷延性意識障害の治療と介護

 

遷延性意識障害になると、症状の回復を目指す治療よりも、現状維持を目的とした治療が行われます。中心となる治療は以下の3つです。

 

肺炎の予防

唾液、胃液などが誤って気管に入ることがあります。それにより肺炎が起こることがあるため、それを予防します。

 

褥創の予防

寝たきり状態になると、ベッドとの接触局所が血行不良になります。その結果、周辺組織が壊死し始めてしまうのです。これを褥創(じょくそう;褥瘡とも書く)といいます。褥創を防止するために、患者さんの体位を変えてあげます。

 

関節拘縮の予防

体を動かさないでいると、次第に関節が動かなくなってしまいます。関節の動く範囲が狭まることを関節拘縮といいますが、それを予防するために、関節を動かします。

 

こうした治療をはじめ、食事や排せつ処理など、患者さんの介護も必要になります。介護は「自宅介護」と「施設介護」から選ぶのが一般的です。家族にとっては肉体的・精神的に非常に大変なことです。ただ患者さんのことを想って、面倒を見てあげる必要もあるでしょう。

 

■遷延性意識障害での後遺障害

 

もし交通事故を原因として、遷延性意識障害が発症してしまったら被害者は後遺障害認定を受けることができます。この後遺障害認定とは、自賠責施行令が定める基準に従って、慰謝料逸失利益を補償してもらえる制度です。

 

補償内容は認定される等級によって異なります。等級は1級~14級まであり、1級に近いほど重度の障害として認められています。

 

そして、遷延性意識障害が認められた場合、通常は「後遺障害等級1級1号」が認定されます。この内容は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの(要介護)」です。そのため、植物状態である遷延性意識障害の場合は、等級で最も重い1級認定がされるのです。

 

後遺障害認定等級

後遺障害認定の認定基準

後遺障害等級1級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの(要介護)

 

 

■遷延性意識障害の後遺障害認定方法

 

もし「遷延性意識障害の症状」の項で説明した、日本脳神経外科学会が定義する条件に当てはまり遷延性意識障害と診断されたら、その診断書をもとに後遺障害認定を受けることが可能です。またCTやMRI画像、意識障害・精神状態の所見、生活状況報告資料を参考に判断がされることもあります。

 

ただし、この遷延性意識障害の認定をするためには「成年後見人」を選ぶ必要があります。なぜなら、植物状態である患者さんは、認定の手続きを直接受けることができないからです。成年後見人は後遺障害認定を受ける場面だけでなく、日常生活での契約にも必要になっています。そのため、なるべく早めに申立てておくと良いでしょう。成年後見人選任については、弁護士に相談することも可能です。

 

■遷延性意識障害で受けられる慰謝料の金額は?

 

交通事故による遷延性意識障害により後遺障害認定が受けられれば、それに見合った慰謝料逸失利益を受取れます。遷延性意識障害は後遺障害等級1級に該当するため、弁護士基準に従えば2,800万円の慰謝料を受け取ることができます。

 

後遺障害認定をされた等級

弁護士基準の後遺障害慰謝料

後遺障害等級1級認定を受けた場合

2,800万円

※後遺障害慰謝料には、自賠責保険基準任意保険基準弁護士基準(裁判基準)の三つがあります。詳細はこちら:弁護士に依頼すれば示談額が増える訳(3種類の慰謝料支払い基準)

 

 

また、全く就労ができなくなってしまうため、100%の逸失利益を認められます。この逸失利益とは、本来就労によって被害者が得られていたはずの給料・賃金を受け取れる制度です。これが遷延性意識障害の場合は、全く動けなくなってしまうため、本来もらえた逸失利益を100%受け取ることができるのです。

参考:

後遺障害に基づく逸失利益

交通事故の『後遺障害による逸失利益』~重要性と相場計算の注意点

 

そのほか、遷延性意識障害の場合は、損害賠償として家族の慰謝料や介護費用を受け取ることもできます。そのため、損害賠償ではこうした慰謝料等も請求をする必要があるのです。

 

■保険会社の対応は弁護士に任せる

 

遷延性意識障害による後遺障害認定が認められたとしても、保険会社は賠償金の減額を求めることがあります。この根拠は、「遷延性意識障害の患者さんは平均寿命が短いから」です。ただし、この主張は非人道的なものであり、加害者側からの一方的な意見になっています。しかし、裁判ではこの主張が認められたこともあるのです。

 

そこで、こうした保険会社からの無理な主張に対応するために弁護士に依頼しておくといいでしょう。あらかじめ弁護士に依頼をしておくことで、専門的な意見、手段で被害者の権利を主張することができます。その結果、後遺障害慰謝料はもちろん、逸失利益、介護費用、家族の慰謝料等も請求することができるのです。

 

遷延性意識障害による後遺障害認定を説明してきました。もしご家族が遷延性意識障害になってしまうと、患者さんはもちろん、家族の人生にも大きな影響が出てしまいます。後遺障害認定として患者さんを守る制度が整っているので、弁護士と一緒に適切な補償を受けられるように手続きを取るといいでしょう。

 

当エクレシア法律事務所でも、重度の後遺障害認定に関わる交通事故案件のご相談も受け付けております。埼玉県越谷市だけにとどまらず、周辺のエリア(春日部市、川口市、草加市、吉川市、八潮市、三郷市、東京都足立区、千葉県流山市、松戸市など)の方も迷わずご連絡ください。無料相談もございますし、南越谷駅・新越谷駅から徒歩3分ですので、アクセスも良い場所にあります。

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