交通事故で『脳脊髄液減少症』の後遺障害認定を受けるには?
目次
何気ない日常の中にも、交通事故は突然起こるものです。軽度な怪我であればまだしも、中には不運なことに重度の障害を負うこともあります。交通事故によって重度の後遺症を負った人のために、日本では「後遺障害認定」と呼ばれる制度を整えています。
ここでは重度な後遺症の1つである「脳脊髄液減少症」について見ていきます。万が一、医療機関からこの症状の認定を受けた場合には、本ページにて後遺障害認定について詳しく確認ください。
■脳脊髄液減少症とは?
脳脊髄液減少症とは、脳や脊髄の機能を保護する脳性髄液が減少して、起立性頭痛をはじめ、耳鳴りなどの身体的障害を起こす病気のことを言います。脳脊髄液減少症は大きく2つの種類に分けられ、「低髄液圧症」と「脳脊髄液漏出症」に分類できます。
脳脊髄液減少症が発症する原因は定かではなく、一般的には交通事故や怪我、また出産などによって起きるとされています。なお、交通事故によって脳脊髄液減少症の後遺症を負った場合は「後遺障害」と呼びます。
現代医学では治療方法が確立しており、基本的には脳脊髄液減少症は治る病気とされています。ただし、不明な点も多い病気で、現在でも研究中の病気と言われています。
脳脊髄液減少症を患うと、症状の程度によっては仕事にも影響が出やすくなります。しかし、外面的には影響がなさそうに見られるため、被害者は非常に辛い思いをする病気です。したがって、正しく診断を受けて、加害者から慰謝料、逸失利益を受け取る必要があります。
■脳脊髄液減少症の種類
脳脊髄液減少症は「低髄液圧症」と「脳脊髄液漏出症」の2つに分類可能です。これらの違いについて説明します。
○低髄液圧症
低髄液圧症は、液髄圧が低い症候群のことを言います。一般的には自律神経の障害などと言われています。その結果、頭痛などの身体的症状を引き起こしています。
しかし、研究の発展によって脳脊髄液が漏出していることが指摘されています。つまり、それが「脳脊髄液漏出症」です。
○脳脊髄液漏出症
脳脊髄液漏出症は、何らかの影響により脳脊髄液が漏れ出す症候群のことを言います。一般的には、交通事故やスポーツ事故などによる外的要因によって発症するとされています。
ただし、まだ医学的に不明な点も多く、交通事故と脳脊髄液漏出症の因果関係を証明することが困難な病気です。
■脳脊髄液減少症の治療方法
脳脊髄液減少症にはいくつかの有効な治療法が確立しています。
(1)保存療法
保存療法は脳脊髄液減少症の疑いがある場合(発症1カ月以内)に、最初に行う治療法です。具体的には2週間程度、1日23時間は平らになって安静に過ごします。また、1日当たり、1.5リットル~2リットル程度の水分を補給することで、減少した脳脊髄液を回復させます。
(2)ブラッドパッチ療法(硬膜外自家血注入)
ブラッドパッチ療法は、保存療法に効果がない場合に行う治療法です。具体的には、患者さん本人の静脈血を採取し、それを硬膜と背骨の間にある脂肪に注入します。これを2~3回行うことで、漏出口をふさげます。現在では脳脊髄液減少症に対して、最も有効だとされています。
(3)アートセレブ療法(人工髄液)
アートセレブ療法は、ブラッドパッチ療法でも効果がない場合に行う治療方法です。この治療法では、人工髄液を患者さんの体内に注入します。
■脳脊髄液減少症の後遺障害認定
交通事故によって脳脊髄液減少症の後遺症を負った場合、後遺障害認定が認められることがあります。後遺障害認定とは、その等級によって慰謝料額や逸失利益などを受け取ることができる制度のことです。脳脊髄液減少症では以下の3つの後遺障害認定が認められています。
後遺障害認定等級 | 後遺障害認定の認定基準 |
---|---|
後遺障害等級9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することのできる労務が相当な程度に制限されるもの |
後遺障害等級12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
後遺障害等級14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
脳脊髄液減少症のガイドラインは、近年になりようやく整い始めてきました。その結果、以前は保険会社や裁判所も否定的な立場を取っていましたが、この後遺障害認定も認められるようになってきています。
■脳脊髄液減少症の立証ポイント
脳脊髄液減少症の後遺障害認定は認められつつありますが、立証自体は現在でも難しいです。脳脊髄液減少症を立証するには、以下のポイントを証明する必要があります。
- 起立性頭痛が発症していること
- 60mm水柱以下の低髄液圧が証明されること
- びまん性、連続性硬膜肥厚造影所見が得られること
- 交通事故後30日以内に発症していること
それぞれの詳細は下記の通りです。
(1)起立性頭痛の発症
起立性頭痛は立ったまま、もしくは座ったままの状態を維持すると15分程度で、鈍い頭痛を感じる病気です。さらに、耳鳴り、光過敏などの身体的異常も見られる症状となっています。
(2)60mm水柱以下の低髄液圧の証明
腰椎穿刺(ようついせんし)によって低髄液圧が60mm水柱以下であることを証明します。これが証明できると、脳脊髄液減少症が「確実」であると認めさせることができます。なお、穿刺とは、中空の針を刺して体から内部の液体を吸い取ることを言います。
(3)びまん性硬膜肥厚造影所見を得る
脳MRIや脊髄MRIによって、髄液の漏出個所を特定します。こちらも証明できることで、脳脊髄液減少症が「確実」であることを認めさせられます。なお、低髄液圧の証明と髄液の漏出個所を特定できれば、脳脊髄液減少症であると確定させることができます。
(4)交通事故後30日以内に発症する
脳脊髄液減少症は外的要因を受けてから30日以内に発症する病気です。したがって、この間に「交通事故以外の要因がない」とする必要があります。
■脳脊髄液減少症の慰謝料の相場
脳脊髄液減少症では9級、12級、14級の後遺障害等級が認められています。この等級ごとに慰謝料の相場は異なります。ここでは弁護士基準に従って、交通事故で脳脊髄液減少症を患った場合の慰謝料金額を見ていきます。(※括弧内は弁護士を使わない自賠責保険基準の場合)
後遺障害認定をされた等級 | 弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
---|---|
後遺障害等級9級認定を受けた場合 | 690万円(自賠責:324万円) |
後遺障害等級12級認定を受けた場合 | 290万円(自賠責:93万円) |
後遺障害等級14級認定を受けた場合 | 110万円(自賠責:32万円) |
※後遺障害慰謝料には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の三つがあります。弁護士に依頼すると慰謝料の増額が見込めます。詳細はこちら:弁護士に依頼すれば示談額が増える訳(3種類の慰謝料支払い基準)
また、慰謝料に加えて逸失利益も受け取れる場合があります。逸失利益とは、本来、就業していればもらえたであろう給料・賃金のことです。この逸失利益も後遺障害等級に従って受け取ることが可能になっています。
■脳脊髄液減少症なら弁護士に任せよう
もし交通事故によって「脳脊髄液減少症」の後遺症を負った場合は、後遺障害認定を認めてもらう必要があります。しかし、近年まで厚労省によるガイドラインが整っていなかったため、保険会社は全面否定、裁判所も否定的な立場を取ってきました。そのため、通常では被害者が勝つことは困難でした。
ただし、平成23年10月に厚労省が脳脊髄液減少症のガイドラインをまとめ、社会的にも認知されるようになってきています。けれども、交通事故と脳脊髄液減少症の因果関係を証明することは、未だに困難であることは違いありません。
そこで被害者の力になってくれるのが「弁護士」です。弁護士に依頼すれば、患者さんは治療に専念できます。そして被害者の主張を裁判所等に訴え出ることができます。
実際、最近では弁護士に依頼することで、脳脊髄液減少症を認めさせることもできています。そのため、万が一、交通事故で脳脊髄液減少症を負った場合には、弁護士に一度相談をすると良いでしょう。
脳脊髄液減少症の基本と、後遺障害認定について見てきましたがいかがでしょうか。以前はなかなか認められなかった疾病ではありますが、近年では判例でも認められるようになっています。もし、交通事故によって脳脊髄液減少症を負ったら、泣き寝入りせず、弁護士に相談をするようしてください。
■交通事故後遺障害認定のご相談はエクレシア法律事務所(埼玉県越谷市)まで
当エクレシア法律事務所は交通事故に強い弁護士が復数人在籍している埼玉県越谷市にある法律事務所です。越谷地区(越谷市だけでなく、春日部市、草加市、吉川市、三郷市、八潮市、川口市、東京都足立区、千葉県流山市、松戸市など)周辺のエリアの方からもご相談をお受けしております。
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