交通事故で『RSD』?後遺障害、立証方法、慰謝料など(まとめ)
目次
毎年50万件以上の交通事故が発生しているのをご存知でしょうか?この数字を見ると、交通事故に巻き込まれる可能性が少なくないのを理解できるでしょう。
軽度な交通事故ならまだしも、重度な交通事故に巻き込まれると後遺症として残ってしまうこともあります。ここでは後遺症の1つ「反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)」について説明をしていきます。
■反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)とは?
反射性交感神経性ジストロフィー(reflex sympathetic dystrophy;以下、RSD)とは、代表的な神経因性疼痛です。神経因性疼痛とは、末梢神経や中枢神経の障害の一種で、患者に対して痛みだけを与える恐ろしい疾患です。
RSDは、四肢のいずれかに打撲や捻挫などの怪我をした際に発症することがあります。本来なら軽微な怪我が治癒すれば、患部は正常の状態に戻ります。しかし、RSDの場合は治癒後も異常な痛みを伴ったり、むくみが生じたりします。また、最終的には機能不全に陥る可能性もある疾患です。そのため、軽い交通事故だと思っても、リハビリなどをしているうちに、RSDだと分かることもあります。
RSDは周囲からは分かりにくく、次第に症状が悪化していくことが一般的です。また、現代医療をもってしてもその病態が解明されておらず、発症すると重度の後遺症になる可能性が高いと危惧されています。そのため、早期に異常を発見し、神経ブロック療法や理学療法を受ける必要があります。
現在では複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome;以下、CRPS)と名称することもあり、そのⅠ類(CRPS-typeⅠ)を「RSD」、Ⅱ類(CRPS-typeⅡ)を「カウザルギー(Causalgia)」と分類することもあります。
■RSD・カウザルギーの症状
一度発症すると重度な後遺症になる可能性が高いRSDとカウザルギーですが、これらは手足に発症することがほとんどです。もし打撲やねんざ後に次のような症状が見られたら、RSDやカウザルギーを疑うと良いかもしれません。
RSD(CRPS-typeⅠ)
RSDは、末梢神経の損傷がない怪我の治癒後に、続発して生じた症状を指します。症状の特徴は灼熱痛・疼痛、関節拘縮(かんせつこうしゅく;関節の動く範囲が狭まること)、腫張(むくみ)、皮膚色の変化が挙げられます。またこれらの症状を受けて、発汗の減少、皮膚温の低下 血管運動調節の不安定化などを誘発することもあります。
必ずしも交通事故によって起きた症状とは言い切れないため、保険会社との争点になりやすいものです。
カウザルギー(CRPS-typeⅡ)
カウザルギーは、末梢神経の損傷に伴って続発した症状を言います。灼熱痛、手や足の機能低下などをはじめ、浮腫、皮膚色の変化などが症状として見られます。急激な神経損傷が見られるため、RSDよりも後遺障害として立証しやすい傾向があります。
■RSDの症状の進行状態
RSDの症状は段階的に悪化していくことが一般的です。大きく3つの段階に分かれ、それぞれの症状は下記のようになっています。
第1段階(1か月~3か月)
患部に焼けるような痛みを感じるようになり、関節がこわばり始めます。患部の爪先などに違和感を覚えることもあるようです。
第2段階(3か月~1年)
患部に激しい痛みを伴うようになり、腫れが広がり始めます。患部から先の組織(体毛、爪先)の生育が顕著に弱まることが分かってくる時期です。筋肉が委縮し始め、動きが制限されるため生活に支障が出始めます。
第3段階(1年~2年)
患部の皮膚・骨が明らかに変化していることが分かります。広範囲にわたり痛みを感じるようになり、患部の動きが著しく制限されます。
■交通事故によるRSDでの後遺障害等級
交通事故によってRSDが発症した場合、後遺障害認定を受けられる可能性があります。後遺障害認定とは、交通事故によって負った後遺症が、「自賠責施行令」の定める基準を満たす時、その等級によって慰謝料・逸失利益などの補償をする制度です。
この等級は1級~14級まであり、1級に近いほど重度の障害と認定されます。そしてRSDの後遺障害等級は、カウザルギーと同様の基準により、7級、9級、12級の認定が行われています。これらの基準は下記の通りです。
後遺障害認定等級 | 後遺障害認定の認定基準 |
後遺障害等級7級4号 | 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することが出来ないもの |
後遺障害等級9級10号 | 通常の労務に服することはできるが,疼痛により時には労働に従事することができなくなるため,就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
後遺障害等級12級13号 | 通常の労務に服することはできるが,時には労働に差し支える程度の疼痛が起こるもの |
また、RSDを原因として四肢の全てが機能不全に陥った場合は、5級以上の等級が認定されることもあります。逆に、このRSDと認定されない場合は、14級の認定を受けるケースもあるので、確実に立証していくことが重要です。
■RSDが後遺障害認定されるためのポイント
RSDは後遺障害認定の中でも、立証が難しい後遺症として知られています。その理由としては、RSDの特異性にあり、専門医でも判断しかねることがあるからです。そこで後遺障害認定されるために必要な立証要件を確認しておきます。
- ①関節拘縮が見られる
- ②骨の萎縮が見られる
- ③下記に記す皮膚の変化が見られる
- 皮膚温の変化
- 皮膚の萎縮
これら3つを客観的に立証しなければ、後遺障害認定を受けることはできません。なお、特に難しいのが「②骨の委縮が見られる」です。なぜなら、医療分野におけるRSDの基準には、この骨の委縮が含まれていないからです。その結果、医療分野においてはRSDとして認められても、自賠責保険では認められない可能性もあります。
こうしたことから、最終的には裁判にて損害賠償を求めるケースも見られるのです。
■RSDで受けられる慰謝料の金額は?
RSDの後遺障害が認定されたら、等級によって慰謝料を受け取ることができます。慰謝料の基準は3つありますが、そのうち最も高い弁護士基準(※)を参考に確認をしてみます。
後遺障害認定をされた等級 | 弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
後遺障害等級7級認定を受けた場合 | 1,000万円 |
後遺障害等級9級認定を受けた場合 | 690万円 |
後遺障害等級12級認定を受けた場合 | 290万円 |
※後遺障害慰謝料には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の三つがあります。詳細はこちら:弁護士に依頼すれば示談額が増える訳(3種類の慰謝料支払い基準)
ただし、これらはあくまで目安となっており、実際には保険会社が「素因減額」を主張することもあります。この素因減額とは、患者が本来持っていた遺伝的要因、心理的要因によりRSDを発症したとする主張です。もちろん、これは可能性としてはゼロではありません。しかし、実際の裁判では素因減額されていない場合が多くあります。そのため、交通事故とRSDの因果関係を証明し、適切な補償を求めることが肝心になっています。
■交通事故の対応に強い弁護士に依頼する
RSDはその立証の難しさから、保険会社と対峙することも少なくありません。こうした場合に、患者さん一人で対応すると、本来もらえるはずの補償ですらもらえなくなる可能性もあります。そんな時に頼りになるのが、「交通事故の対応に強い弁護士」です。
弁護士に保険会社の対応を依頼しておけば、RSDの立証や素因減額などの主張の際に、専門的な知見から患者さんを守ってくれます。そのため、RSDの疑いが見られたら、患者さんはリハビリに専念をし、後遺障害認定は弁護士に任せるのが良いでしょう。
RSDによる後遺障害認定を見てきました。RSDは後遺症の中でも、後遺障害として立証するのが難しい疾患の1つです。専門医に診断を受けることはもちろん、交通事故の対応に強い弁護士に依頼しておき、確実に後遺障害認定を受けられるようにしておくといいでしょう。
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