交通事故で「下肢の後遺障害」に~後遺障害認定や慰謝料など
目次
突然の交通事故によって、体に何らかの後遺症を負うことは珍しくありません。日本では交通事故により後遺症を負った被害者に対して、後遺障害制度を整えることで救済をしています。
そこで「下肢機能障害」を負った際に、どのような後遺障害認定を受けられるのかを見ていきます。もし交通事故で股関節やひざ関節に損傷を受けたら、慰謝料や逸失利益を請求できる可能性があるのでよく確認をしてください。
なお、ここでは足指の障害には触れていないので注意をしてください。後遺障害では足指は下肢と別に扱われます。
■下肢とは?
下肢とは「股関節」「ひざ関節」「足関節(足首)」の3大関節に加えて足指を合わせた部位を指します。下肢には全身を支えてバランスを取る役割や、歩行の役割があります。そのため、下肢に損傷が出ると、私生活や仕事に支障が出てきてしまうでしょう。
下肢を損傷する原因は様々あり、例えばスポーツ事故や交通事故、病気などがあります。いずれにしろ下肢を損傷すると、歩けない、立っていられないなどの支障が生じ、肉体的・精神的に苦痛を感じることが多いです。また損傷の程度によっては介護者も必要になり、周囲の人にも苦労をかけることになってしまいます。したがって、もし交通事故で下肢機能障害を負ったなら、加害者に対して正当に慰謝料や逸失利益を請求しなければなりません。
■下肢の後遺障害の種類
交通事故で負った後遺症を「後遺障害」と言います。下肢の後遺障害には「欠損障害」「機能障害」「変形障害」「短縮障害」の4つの種類があります。それぞれの違いについて確認をしておきましょう。
(1)下肢欠損障害
下肢欠損障害とは、3大関節の一定部分を離断や切断などで失う後遺障害のことです。どの部位で離断、切断されたかによって欠損具合が大きく変わり、それに伴って認められる後遺障害等級も変わります。具体的には下記の3つの区分で分けられます。
- 下肢をひざ関節以上で失ったもの
- 下肢を足関節以上で失ったもの
- リスフラン関節※以上で失ったもの
これらの欠損具合に従って、後遺障害の程度が認められることになっています。
※リスフラン関節とは、足の甲のアーチになっている部分の中心にある、可動域の狭い関節です。
(2)下肢機能障害
下肢機能障害とは、3大関節のいずれかの働きが悪くなる後遺障害のことです。働きが悪くなるとは、具体的には可動域が狭まる状態を指します。そしてこの機能障害は、程度によって3つに区分されています。
- 関節の用を廃した
- 関節の機能に著しい障害を残す
- 関節の機能に障害を残す
こうした機能障害の程度によって、下肢機能障害の後遺障害が認められることになっています。
(3)下肢変形障害
下肢変形障害とは、障害部位の骨が固まらない、もしくは歪んで固まってしまった後遺障害です。変形障害には「偽関節」と呼ばれる、骨折した部位が固まらずに関節以外の部位が曲がってしまう症状があります。また、「変形」と呼ばれる、骨折した部位が正常な状態以上に曲がってしまう症状もあります。これらの症状が見られる場合に後遺障害として認められます。
(4)下肢短縮障害
下肢短縮障害とは、交通事故によって下肢の長さが短くなる後遺障害のことです。上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)※から下腿内果下端※までの長さを計測し、健康な足と比べて左右で長さが異なる場合に後遺障害が認められます。
※上前腸骨棘とは、骨盤上部の前に突き出した部分で腰に手を当てたときに触れることが出来る出っ張りの部分です。
※下腿内果下端とは、すねの骨の下の内側踝(くるぶし)の下端という意味です。
■下肢の後遺障害認定
下肢の後遺障害は、その後遺障害の種類ごとに定められています。後遺障害認定が認められると加害者から慰謝料や逸失利益を受取れます。この等級は1級から14級まであり、1級に近いほど重度の後遺障害として扱われます。詳しくは以下の通りです。
(1)下肢欠損障害
下肢欠損障害では最高で1級から7級まで、5段階に6種類の後遺障害が認められています。
後遺障害認定等級 | 後遺障害認定の認定基準 |
---|---|
後遺障害等級1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失った |
後遺障害等級2級4号 | 両下肢を足関節以上で失った |
後遺障害等級4級5号 | 1下肢をひざ関節以上で失った |
後遺障害等級4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失った |
後遺障害等級5級5号 | 1下肢を足関節以上で失った |
後遺障害等級7級8号 | 1足をリスフラン関節以上で失った |
(2)下肢機能障害
下肢機能障害では1級から12級まで、6段階で後遺障害が認められることになっています。
後遺障害認定等級 | 後遺障害認定の認定基準 |
---|---|
後遺障害等級1級6号 | 両下肢の用を全廃した |
後遺障害等級5級7号 | 1下肢の用を全廃した |
後遺障害等級6級7号 | 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃した |
後遺障害等級8級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃した |
後遺障害等級10級11号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残す |
後遺障害等級12級7号 | 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残す |
(3)下肢変形障害
下肢変形障害では7級から12級まで3段階が後遺障害として認められています。
後遺障害認定等級 | 後遺障害認定の認定基準 |
---|---|
後遺障害等級7級10号 | 1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残す |
後遺障害等級8級9号 | 1下肢に偽関節を残す |
後遺障害等級12級8号 | 長管骨に変形を残す |
(4)下肢短縮障害
下肢短縮障害では8級から13級まで3段階の後遺障害が認められています。
後遺障害認定等級 | 後遺障害認定の認定基準 |
---|---|
後遺障害等級8級5号 | 1下肢を5センチメートル以上短縮した |
後遺障害等級10級8号 | 1下肢を3センチメートル以上短縮した |
後遺障害等級13級8号 | 1下肢を1センチメートル以上短縮した |
■下肢の後遺障害の立証ポイント
下肢の後遺障害は外傷として判断が付きやすいため、比較的立証がしやすい後遺障害です。しかし単に加害者に請求をしても、医学的な根拠等がなければ、その主張は退けられるでしょう。したがって、次の立証ポイントを押さえておく必要があります。
(1)事故時に骨折等の損傷が確認できる
下肢の後遺障害を立証するには、まず交通事故によって骨折や脱臼、腱の損傷など器質的損傷が見られている必要があります。こうした損傷は病院でレントゲンやMRIなどの画像撮影をすることで判明できます。したがって、事故後には必ず病院で損傷個所の画像撮影をしておきましょう。
(2)機能障害の原因が確認できる
下肢の後遺障害を立証するポイントの2つ目が、症状固定時に下肢の機能障害に関する原因を確認できることにあります。こうした原因には癒合不良や関節強直等があります。これらの原因が確認できる必要があります。
これら2つを立証できる際に、下肢の後遺障害を認めさせることができます。
■下肢の障害による慰謝料の相場
下肢の後遺障害が認められれば、その等級に従って慰謝料を加害者(保険会社)に請求することができます。なお、障害の種類に関わらず、慰謝料は等級ごとに相場が決まっています。ここでは一番高い弁護士基準を参考に、慰謝料の相場を確認しておきます。
(※括弧内は弁護士を利用しない自賠責保険の場合)
後遺障害認定をされた等級 | 弁護士基準の後遺障害慰謝料 |
---|---|
後遺障害等級1級認定を受けた場合 | 2,800万円(自賠責:1,100万円) |
後遺障害等級2級認定を受けた場合 | 2,370万円(自賠責:958万円) |
後遺障害等級4級認定を受けた場合 | 1,670万円(自賠責:712万円) |
後遺障害等級5級認定を受けた場合 | 1,400万円(自賠責:599万円) |
後遺障害等級6級認定を受けた場合 | 1,180万円(自賠責:498万円) |
後遺障害等級7級認定を受けた場合 | 1,000万円(自賠責:409万円) |
後遺障害等級8級認定を受けた場合 | 830万円(自賠責:324万円) |
後遺障害等級10級認定を受けた場合 | 550万円(自賠責:187万円) |
後遺障害等級12級認定を受けた場合 | 290万円(自賠責:93万円) |
後遺障害等級13級認定を受けた場合 | 180万円(自賠責:57万円) |
※後遺障害慰謝料には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の三つがあります。弁護士に依頼すると慰謝料の増額が見込めます。詳細はこちら:弁護士に依頼すれば示談額が増える訳(3種類の慰謝料支払い基準)
このほかに後遺障害等級ごとに逸失利益が認められています。逸失利益は本来であれば、将来受け取るはずであった給料・賃金のことで、交通事故によって受取ることができなくなったお金です。この逸失利益も加害者に請求し、受取ることができます。
■下肢の後遺障害は弁護士に相談しよう!
下肢の後遺障害は私生活や仕事に多大な影響を与えます。その肉体的・精神的苦痛は生涯に渡って続くため、加害者に正当に慰謝料・逸失利益を請求する必要があります。
しかし、一般の人では後遺障害の知識が乏しいために、加害者(保険会社)の都合のいいように話が進みがちです。これでは正当に慰謝料を受取ることができません。
そこで下肢の後遺障害を受けたなら、弁護士に相談をしてみるといいでしょう。後遺障害に強い弁護士であれば被害者の権利を正当に主張してくれます。そのため、被害者の皆さんは治療に専念し、保険会社の対応は弁護士に任せられるでしょう。こうしたことから下肢の後遺障害を負ったなら弁護士に相談をすべきです。
■まとめ
下肢の後遺障害認定について見てきましたがいかがでしょうか。下肢の後遺障害は4つに分類でき、それぞれに等級が定められています。そして立証するには「損傷を確認できること」と「原因が確認できること」の2つが必要です。したがって、これらのポイントを押さえて後遺障害認定を受けるといいでしょう。不安な点があれば後遺障害に強い弁護士に相談することも大事です。
埼玉県で交通事故に遭ったらエクレシア法律事務所へ
埼玉県越谷市にある当エクレシア法律事務所は新越谷駅・南越谷駅から3分のところにあり、バリアフリーになっておりますので、下肢後遺障害に遭われた方も安心してお越しいただけます。
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下肢だけでなく、様々な交通事故後遺障害に遭われた方、適切な慰謝料や逸失利益などを確保するために、親身なご相談を承ります。無料相談もございますので、まずはお電話かもしくはメールフォームにてお問い合わせください。
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