交通事故と休業損害の関係性~主婦って休業損害請求できるの?相場は?~
目次
■交通事故における財産的損害賠償金とは?
交通事故における損害賠償について、特に、財産的損害賠償金について、改めてみていきましょう。
交通事故によって被害を受けた場合、加害者に対して請求できる財産的損害賠償金には、大きく分けて2つの種類があります。
○積極損害
交通事故に遭った事で、実際に必要となるまたは必要になるであろう支出の事です。具体的には治療費、付添い看護費、交通費、診断書作成費などがこれにあたります。
○消極損害
これは交通事故によって失われてしまった利益のことを言います。例えば交通事故で車椅子生活を余儀なくされた場合、仕事に大きな支障が発生するため、その分を補填する必要があります。具体的には、休業損害、逸失利益などがこれにあたります。
積極損害については基本的にはどんな人であれ考え方は同じですが、消極損害を計算する場合は、その人の性別や職業などによって大きく変わってきます。
例えば、実質的な収入のない主婦にも休業損害や逸失利益は認められるのでしょうか。
■家事労働は金銭としての評価が可能です。
ときどき、
「私は主婦で収入はないから、治療費以外は請求できないんですよね?」
なんて言う質問を受ける事がありますが、それは大きな間違いです。日本においては、主婦の家事労働によって一定の財産上の利益が生じていると考え、休業損害や逸失利益を認めています。
○計算方法
・専業主婦の場合:
賃金センサスの女子労働者平均賃金÷365×休業日数
・兼業主婦の場合(パートなど)
前年度年収額÷365×休業日数
又は
事故前3ヶ月の収入額÷90×休業日数
賃金センサスとは、政府統計の平均賃金でホームページからでも確認する事が出来ます。例えば平成25年の女性の平均賃金は3,539,300円です。
兼業主婦の年収が3,539,300円よりも多い場合は兼業主婦の年収をベースに計算し、もしも少ない場合は賃金センサスをベースに計算をしますので、兼業主婦が損をすることはありません。
■死亡した場合の逸失利益の請求も可能です。
例えば30歳の専業主婦が交通事故によって死亡した場合、死亡した事による逸失利益の請求が可能です。考え方としては、上記休業損害と同じですが、死亡した事によって本人の生活費はかからなくなるわけなのでその分は逸失利益から控除されます。控除される金額としてはおよそ30%程度です
○計算方法
賃金センサスの女子労働者平均賃金×(1−0.3)×ライプニッツ係数※
平成25年の賃金センサスで計算すると約4140万円となります。
※ライプニッツ係数や詳細な計算方法については、損害額の算定(死亡による逸失利益)を参照。
■職業別に見るその他の休業損害の考え方
1:会社員の場合
サラリーマンの休業損害は、前年度の年収か事故前3ヶ月の収入をベースに一日あたりの損害額を計算し、それを休業日数分請求する事になります。
また、事故によって本人の出世に影響が出る場合は、その分の減収についても休業損害として請求が可能です。なお、有給を使用してもしなくても休業損害の請求には影響がありませんので、もったいない方は使わない方が良いでしょう。
請求するには会社に「休業損害証明書」を記入してもらう必要があります。
2:自営業者の場合
お店や事業を経営されている方の休業損害は、前年度の確定申告所得額または賃金センサスの平均賃金額によって計算します。そのため、きちんと税金の申告をしていない場合は、賃金センサスよりも事実上は年収が上でも、加害者側がその金額を認めない可能性がありますので予め注意しましょう。
3:学生の場合
学生には収入がありませんので、休業損害は発生しません。但し、アルバイトをしている場合はその収入を証明する事で請求する事も可能です。
4:大家さんや株主などの場合
これらいわゆる不労所得者については、黙っていても家賃や配当金が得られるため、事故で仕事を休んでも収入自体に直接的な影響は発生しません。よって休業損害の請求は難しいでしょう。
5:失業者の場合
失業者には収入はありませんので、休業損害もありません。但しすでに就職が決まっていたり、就職する可能性が極めて高かったりするような場合は弁護士の主張の仕方次第では認められる可能性があります。
■産休、育休中に事故にあっても休業損害は請求できるのか。
これも比較的質問の多い内容になりますが、これは休業損害の本来の意味を理解していれば分かります。
休業損害とは消極損害であり、消極損害とは事故によって「失われた利益」のことです。つまり、休業損害を請求するという事は、事故によって収入が減少していることを証明する必要があります。
企業によっては産休、育休中でも一定の給与が支給されていますので、この場合には休業損害は認められないでしょう。一方産休、育休中に給与がなく無収入となっているような場合は、先ほどの家事労働者をベースに休業損害を請求する事になるでしょう。
この辺りは担当弁護士の腕次第で結論が変わる可能性が大いにありますので、該当する方は必ず弁護士に依頼する事をお勧めします。
また、妊娠中に事故に遭い流産してしまったような場合は、通常の慰謝料の増額要素となります。妊娠初期よりも出産予定日に近づくにつれ増額される金額も高くなります。
妊娠3ヶ月で100万円前後、妊娠10ヶ月で1000万円程度が目安となります。
※参考記事:交通事故で流産してしまった場合、慰謝料は増額されるのか?
■休業損害の請求は、経験豊富な弁護士のサポートが重要。
休業損害は、計算自体は慣れてしまえばそこまで難しくはありません。問題なのは、加害者側にその金額を休業損害として認めて支払わせることが簡単ではないという事です。
本当にその年収が正しいのか、休業期間は妥当であるのか、労働にどの程度の影響があるのか、などについて加害者側の弁護士は徹底的に争ってくる可能性もあります。
また自賠責保険の限度額は、治療費、慰謝料、休業損害などをすべて含めてたった120万円です。つまり、これを超える分は相手方の保険会社(任意保険に加入していなければ加害者本人)が認めなければ支払ってもらえません。
こちらの希望通りの金額を相手に認めさせるには、やはり交通事故に強い弁護士の交渉力が絶対的に必要なのです。
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