過失割合は自動車に不利?弱者救済の論理とは?
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自動車を運転していて、出会いがしらの交差点で自転車と接触しました。
このとき、信号は自動車側が青、優先道路。自転車側は赤、どう考えても飛び出しです。それでも、自転車のほうが「弱者救済の論理」で過失割合が変わってしまうのでしょうか。自動車の私は前方不注意なのでしょうか。
■自転車は車に比して、強く保護される。
通常、直進車同士が交差点において出会い頭に接触事故を起こした場合、信号機が青対信号機赤の場合、過失割合は、青0:赤100となり、完全に信号無視をした側の責任となります。
これは当然でしょう。
しかし、相手が自転車だと話が変わってきます。
いわゆる「弱者救済の論理」「弱者保護の理論」によって、車側の過失がプラスされ、
車20:自転車80
と、一見なんの過失もないかのように思われる車にも過失割合がついてしまうのです。
自転車は車に対して弱者である、つまり事故が発生したときの被害が圧倒的に大きいため、車の方により高い注意義務を課しているのです。
ちなみに被害者が歩行者である場合は、さらに車の過失が重くなります。
つまり簡単に言うと、車はたとえ自転車が赤信号で交差点に進入してこようとも、衝突を回避するだけの注意を払うべきという考え方なのであり、前方不注意、前方不注視として判断されるのです。
■基本過失割合は「絶対」ではない。判例に見る例外とは。
自転車との事故については、今年5月に注目の判例が飛び出しました。交差点で赤信号を無視して進入してきた自転車男性をはねて死亡させてしまったドライバーに対して、当初過失を認める見解を示していた裁判所が、高裁判決において逆転無罪となったのです。
注目すべきは以下の裁判官のコメントです。
「信号の表示に従い横断を控えると期待するはずの被告に、注意義務を課すことはできない」
つまり、赤信号を無視してまで進行してくる自転車を注意して回避する程の義務は、ドライバーに課す事はできないと判断したのです。
これは非常に大きなポイントであり、刑事責任だけにとどまらず民事の過失割合についても大きな影響があると考えられます。
但し、これはあくまでこの個別のケースにおける結論であり、すべてのケースにおいて同じ結論に至るとは限りません。
■自転車事故の過失割合に影響を与える3つの要素。
○その1:信号機の色
まずはこれが一番重要になります。自転車側の信号機が赤であれば、当然ながら信号無視をした自転車側の過失が大きいとみなされます。
しかし、先ほども申し上げたように、車が信号無視をすればその過失割合は100ですが、自転車が信号無視をしても必ずしも自転車が100の過失を負うとは限りません。
基本的には弱者救済で20は車の過失となると考えましょう。
○その2:道路の幅員
基本的に交差点など出会い頭の事故の場合は、幅の狭い道路から広い道路に進入しようとする側の責任が重くなります。これは自転車事故でも同じ事が言えるため、事故現場の道路の幅員はとても重要になります。
○その3:一時停止の有無
自転車も法律上は軽車両ですので、一時停止の標識には従わなければなりません。これをせずに車と衝突した場合は、自転車側にも過失がつく事となります。
このように、過失割合を決める際には、これら以外にもさまざまな要素が細かく影響してきます。すべての要素を正しく考慮した上で、適切な過失割合を認定してもらうためには、交通事故に強い弁護士によるサポートは必要不可欠です。
過失割合は、支払われる損害賠償金に大きな影響を与えます。これは、被害者、加害者双方に言える事です。納得できない場合は、できる限り早い段階で交通事故に強い弁護士に相談しましょう。
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