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交通事故の素因減額とは?保険会社の示談額に納得できない方へ

 交通事故素因減額保険会社のイメージ

■素因減額とは

 

交通事故に遭って傷害を負った場合、治療が終わった後に、加害者側の保険会社と事故によって被った損害の賠償に関する交渉をすることになります。

 

この交渉の場面で、被害者にもともとあった疾患を理由に、保険会社側が賠償額の減額を主張してくることがあります。例えば、被害者が事故前から椎間板ヘルニアの持病を持っており、そのために事故によって負った頸椎捻挫に関する通院期間が長くなった、したがって賠償額を減額すべきである、などという主張です。

 

このように、損害の発生や拡大に影響する被害者側の事情を「素因」と言い、この素因によって賠償額が減額されることを「素因減額」と言います

 

被害者側の事情によって損害が発生したり拡大したりした場合に、加害者側に損害のすべてにわたって負担させるのは公平でないため、被害者側に一定の素因が認められる場合には、一般的に賠償額の減額が認められています。

 

この素因減額がどのような場合に認められるのかについてまとめてみましょう。

 

■1 減額の要件

 

疾患による素因減額が認められるには、被害者の疾患が事故前から存在している必要があります。

 

ただ、疾患があっても事故前には症状が出ておらず、事故によって症状が発現した場合には減額の対象となる場合があります。例えば、事故前には先ほど例に挙げた椎間板ヘルニアの自覚症状はなく、事故によって発症したようなケースがこれに当たります。

 

■2 減額される素因

 

減額の対象となる素因は、身体的素因心因的素因があります。

 

(1) 身体的素因

 

これは、事故前から被害者に疾患があった場合のように、被害者に身体的な素因がある場合です。

 

被害者の身体的素因が事故と相まって症状を発生させた場合や、症状を拡大させた場合には、素因減額の対象となる場合があります。

 

ただし、被害者の身体的素因と言っても、疾患に当たる場合には素因減額の対象となりますが、それぞれの人の身体的特徴に過ぎない場合には原則として素因減額の対象とはなりません

 

他の人より首が長く、頸椎に不安定性がある被害者について、最高裁は、「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできないと解すべきである。」として、素因減額を行いませんでした(最高裁平成8年10月29日判決)。

 

肥満なども身体的特徴ということができますが、極端な肥満を除き、素因と見ることはできないでしょう。

 

 

具体的にどのようなものが身体的素因に当たるかですが、椎間板ヘルニア変形性頸椎症変形性脊椎症などが素因としてよく問題となる疾患と言えますが、具体的には事故前事故後のそれぞれの症状から判断することになります。

 

なお、変形性頸椎症などの加齢による変性を伴うものについては、事故前に疾患と言える状態にあった場合以外は素因とは認めないのが一般です。人に通常見られる老化を理由に減額することは妥当でないからです。

 

(2) 心因的素因

 

これは、被害者に、特異な性格、事故による受傷に対する過剰な反応などの心因的な素因がある場合です。賠償神経症(事故による賠償をなるべく多く得たいという願望によって起こる神経症)などもこれに含まれるとされています。

 

これらの心因的な素因が損害の発生や拡大に影響した場合には、素因減額の対象となる場合があります。

 

最高裁は、被害者が軽度の追突事故によるむち打ち症の後に外傷性神経症を発症し10年以上治療を継続していた事案について、「その損害がその加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、(中略)その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができる。」として、心因的素因による減額を認めています(最高裁昭和63年4月21日判決)。

 

裁判実務においては、事故の程度が軽いこと、被害者の愁訴に合致する他覚的所見がないこと、一般的な治療期間を超える治療期間を必要としたこと、などの要素を総合して判断されていると言えるでしょう。

 

なお、心因的素因としては、被害者の自殺もしばしば問題になりますが(事故後に被害者がうつ病となり自殺に至ったケースなど)、肯定例、否定例ともにあり、ケースによって具体的に判断することになります。

 

■3 減額の範囲

 

通常は、素因減額は一定の割合(「○パーセント」)で認定されます。

 

では、素因減額が認められるとして、どの程度の割合の減額が認められるのでしょうか。

 

実は素因減額に関する基準はありません。素因自体様々なものが考えられる上に、それが事故による受傷にどのような影響を与えるかはケースバイケースであり、類型化が難しいからです。

 

したがって、減額の割合は、素因が損害の発生や拡大に寄与した程度に加え、事故の態様、素因の内容・軽重、事故による受傷の内容・程度など様々な事情を考慮して、ケースごとに判断することになります

 

■まとめ:交通事故と素因減額の判断は弁護士に

 

交通事故の被害にあった際に、保険会社から素因減額を理由にして示談額の減額を言い渡されるケースもあるようですが、それが妥当なのか分からない、あるいはそんなはずは無いと、疑問を持たれる方も多いのが実情です。

交通事故の示談額が保険会社から提示されて初めて、問題の複雑さに気がつく方もいらっしゃるかも知れません。

 

ですから、交通事故にあった場合、できるだけ早い段階で交通事故に強い弁護士に依頼をすることが大切です。

素因減額を理由に賠償額の不当な減額を要求される前から、適切な治療を受けつつ弁護士に介入してもらうことが大切なのです。

 

埼玉県越谷市の交通事故に強い弁護士:エクレシア法律事務所

 

一瞬にして人の大切な命や健康・時間・財産を失ってしまう交通事故のために、大変なご苦労をされる被害者の味方となるのは弁護士です。当エクレシア法律事務所では、交通事故を含め、様々な案件を設立以来約20年対応してきた確かな相談実績があります。

 

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