後遺障害等級第12級で1010万円アップの1350万円で示談成立の事例
後遺障害等級第12級となるも、後遺障害逸失利益につき、労働能力喪失率と労働能力喪失期間を著しく低く算定されたため、裁判基準で反論し、1010万円アップの1350万円で示談成立に至った事例。
相談者
Aさん、40代、男性、会社員
相談前
片側2車線の左道路をAさんは初心者マークを付けて軽自動車で走行中、右車線を走行していた相手方が、方向指示器を出さずにAさんの車線に車線変更してきたため、Aさんの車両と衝突。Aさんの車両は、制御不能となって電柱に激突し、Aさんは、右手首骨折、右肘関節捻挫等の怪我を負い、11ヶ月通院して症状固定。その後、後遺障害等級第12級6号の認定を受けました。途中Aさんは、ご自分で保険会社と車両の物損についてAさんの被害者の過失を20%として示談を成立させました。Aさんは、人損についても保険会社と交渉したのですが、提示額が340万円と予想以上に低かったので、当事務所に相談に来られました。
相談後
担当弁護士は、保険会社の提示内容を詳細に検討したところ、①通院慰謝料及び後遺症慰謝料が裁判基準(赤本基準)よりも20%少ない点、②Aさんの過失を20%としている点、③後遺障害逸失利益につき、労働能力喪失率が本来12%であるべきところ5%とされ、かつ労働能力喪失期間が本来20年であるべきところ3年間とされている点が納得できないところでした。
そこで担当弁護士は、①通院慰謝料及び後遺症慰謝料については、裁判基準(赤本基準)により、通院慰謝料120万円→150万円、後遺症慰謝料232万円→290万円を主張しました。②物損の示談については、Aさんの車両に同乗していた知人に協力を得て、相手方が車線変更の合図を出していない旨の陳述書を作成することができました。③後遺障害逸失利益については、労働能力喪失率は14%であり、同じく労働能力喪失期間は20年であるから、後遺障害逸失利益は、71万円→910万円であることを強く主張し、保険会社側が提出した意見書の矛盾点をつくとともに、当方の診断書の正当性を強くアピールしました。その結果、総額として過失相殺分を含めて1010万円増額の1350万円で示談成立に至りました。
弁護士からのコメント
①慰謝料は、保険会社が基準とする任意保険基準での金額は裁判所で認められる金額(裁判基準)よりも低いのが一般的です。本件でも、裁判基準よりも20%低い金額を提示しており、ご本人が何も知らずに示談していたら、100万円近くも損をしていたことになります。
②被害者の過失に関してですが、物損をご自分で示談されると、金額も小さいから被害者の過失をあまり真剣に考えずに、示談してしまう傾向があります。しかし、本来の過失よりも多い割合で示談してしまうと、後日、人損の示談で覆すのは困難を伴います。本件では、進路変更車の相手方と後続直進車のAさんとの事故ですから、基本過失割合は、相手方70%、Aさん30%になります(本件の赤本過失割合基準はこちらの79図)。そのうえで、Aさんが初心者マークを付けていることで10%が相手方に加算され、相手方が車線変更の合図を出していないのであれば、さらに20%が相手方に加算され、両者の過失割合は100対0で、Aさんには、過失がないことになります。実況見分調書には、相手方が進路変更の合図を出した地点の記載がないことや、Aさんの車両に同乗していた知人が、相手方が車線変更の合図を出していない旨の陳述書を作成してくれたこと等から、過失割合の点では、Aさんの被害者の過失を限りなくゼロに近い状態に持っていけました。
③後遺障害逸失利益に関しては、Aさんは後遺障害等級第12級6号の認定を受けており、当該等級の労働能力喪失率は14%で、同じく労働能力喪失期間は20年であることは、裁判基準(赤本基準)で定められているにもかかわらず、保険会社側は、労働能力喪失率は5%で、同じく労働能力喪失期間は3年であるとの無謀な主張をしてきました。
保険会社の計算
5,214,652円×5%×2.7232=71万円
当方の計算
5,214,652円×14%×12.4622=910万円
上記の計算から分かるように、保険会社の計算は著しく低いことが分かります。しかし、担当弁護士は、診断書等を子細に検討してAさんが後遺障害等級どおりの状況にあることを保険会社に納得させることができました。本件をAさんご自身で解決しようとしたら、以上の保険会社が築いた壁を全て乗り越えなければなりませんでしたが、幸いAさんは弁護士特約に加入していましたので、躊躇無く、弁護士に依頼し、十分な賠償額を受けることができました。