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運転免許をもっていなくても、知っておくべき交通事故の知識

交通事故・自転車事故・歩行者事故のイメージ

交通事故は運転免許を持っていて、普段車を運転している人だけが遭遇するわけではありません。例えば歩行中に車にぶつけられることだって考えられますし、最近では自転車事故も増えています。

運転免許を所持していないと、道路標識の意味について知らないような方も多いのではないでしょうか。

今回は、このような運転免許をお持ちでない方や、普段自動車にも乗らないいわゆるペーパードライバーの方のために、これだけは知っておいて損はない、交通事故の知識について解説していきます。

 

■歩行中の事故

 

自動車事故(自動車乗車中の事故)が交通事故全体の65.6%であるのに対し、歩行者事故(歩行中の事故)は全体の8%と件数自体はそこまで多くありません。しかし、問題なのは負傷の度合いです。自動車事故の場合、死者または重傷者の割合が2.7%であるのに対し、歩行者事故の場合は18%を上回ります。つまり、歩行中事故に万が一遭遇すると、被害が重傷化しやすいため、損害賠償においても非常に難解な問題となるのです。

 

〇事故に遭遇しやすい年齢層

歩行中の事故は、被害者のおよそ半数近くが15歳以下の幼児や児童、または65歳以上の高齢者で占めています。

 

〇歩行者の法令違反と交通事故の意外な関係性

道路交通法というと、自動車の取締のことだけにフォーカスされがちですが、歩行者についても道路交通法の第2章において規程が設けられており、これに違反すると道路交通法違反となります。そしてなんと、歩行者事故の実に3割については、歩行者側の道路交通法違反が認められているのです。さらに驚くべきことが事故による致死率です。歩行者に法令違反がなかった場合の致死率は1.34%であるのに対し、法令違反があった場合の致死率は5.47%と実に4倍近くも高くなるのです。本データは平成26年の警視庁統計をもとにしていますが、過去10年以上さかのぼっても同じようなデータが算出できます。

つまり、歩行者の怪我が重傷化するひとつの要因に、歩行者自身の法令違反も大きく影響しているということなのです。

 

■歩行者の法令違反って、具体的になに?

歩行者事故において最も多い法令違反、それは「横断違反」です。道路交通法では、歩行者が横断してはいけない場所を規定しているのですが、それに違反して道路を横断して車にはねられると言った事故が非常に多いのです。

 

道路交通法

第12条 歩行者は、道路を横断しようとするときは、横断歩道がある場所の附近においては、その横断歩道によって道路を横断しなければならない。

 

2 歩行者は、交差点において道路標識等により斜めに道路を横断することができることとされている場合を除き、斜めに道路を横断してはならない。

 

第13条 歩行者は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によって道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従って道路を横断するときは、この限りでない。

 

2 歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。

 

簡単に言うと

 

〇横断歩道外の横断

〇斜め横断

〇駐車車両の直前、直後の横断

〇走行車両の直前、直後の横断

〇横断禁止場所の横断

 

これらの法令違反によって歩行者事故が誘発されているのです。

 

■歩行者が横断違反した場合、損害賠償にどう影響する?

 

例えば歩行者に法令違反がなく、信号のない横断歩道を通行中に車にはねられた場合、弱者救済の理論などから過失相殺はなく自動車側の過失100%となります。しかし、幹線道路など横断歩道以外の場所を横断したことによってはねられた場合、同じ怪我の程度だとしても歩行者側にも10~30程度の過失割合が認められる可能性が出てきます。過失相殺されてしまうと、当然賠償金の総額は低くなりますので道路を横断する際にはこの点を十分に理解したうえで、正しい判断をすることをおすすめします。そして、なにより危険な行為です。

 

■自転車事故の場合

 

実は自転車も道路交通法上は「軽車両」として認識されており、もちろん道路交通法の適用を受けます。自転車運転中の事故は、歩行者事故の約2倍程度もありますので自転車に乗る際には歩行時以上に細心の注意が必要であると言えます。

 

■自転車事故は法令違反者が多い!

自転車事故の特徴は、歩行者事故に比べ法令違反が多いということです。

実に自転車事故の63.8%が法令違反者なのです。そして、法令違反の過半数以上がいわゆる「安全運転義務違反」なのです。

安全運転義務違反とは、主に以下のような違反を言います。

 

〇ハンドル操作ミス

〇ブレーキ操作ミス

〇前方不注意

〇動静不注視

〇安全不確認

 

これらはすべて車にも適用されますが、自転車にも同じ責任があることを忘れてはなりません。また、これらの違反は過失割合にも大きく影響してきます。自転車の場合は歩行者の時よりも、もともと過失割合が大きいため、それに法令違反が重なると、さらに示談交渉は不利になるでしょう。

 

■危険運転者には、講習が義務化?!

すでにご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、今年平成27年6月から自転車事故防止のため自転車の罰則規定が強化されました。一定の危険行為をして2回以上摘発された自転車運転者は、公安委員会の命令を受けてから3ヶ月以内の指定された期間内に講習を受けなければならなくなりました。車の違反者講習と同じですね。ちなみに危険な違法行為として列挙されている行為は以下の通りです。

 

〇信号無視

〇通行禁止違反

〇歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)

〇通行区分違反

〇路側帯通行時の歩行者の通行妨害

〇遮断踏切立入り

〇交差点安全進行義務違反等

〇交差点優先車妨害等

〇環状交差点安全進行義務違反等

〇指定場所一時不停止等

〇歩道通行時の通行方法違反

〇制動装置(ブレーキ)不良自転車運転

〇酒酔い運転

〇安全運転義務違反

 

このような規定が設けられた以上、これらに違反して自転車事故を起こした場合、今後過失割合についても影響が出てくる可能性があります。自転車を運転する際には十分に注意しましょう。

 

■歩行者事故や自転車事故には「人身傷害補償保険」が使えます。

 

歩行者事故や自転車事故は被害者側が自動車保険に加入していない可能性が高いため、通常は加害者側の対人、対物賠償保険によって保険金を受け取ります。ですが、加害者側が任意保険に入っていない場合は自賠責保険から最低限の補償を受けられるにとどまります。それ以上の補償は加害者側の資力にもよりますが、最悪の場合泣き寝入りとなってしまう可能性すらあるのです。

そんな時に是非活用したいのが、人身傷害補償保険です。例えば、家族の中の誰かが車を所持しており、自動車保険の人身傷害補償保険に加入している場合、保険内容によっては歩行中の事故にも適用することが可能なのです。

人身傷害補償は、示談交渉に関係なく一定額が保険金として支払われますので、加害者側に支払い能力がないような場合は、非常に有効です。

 

■事故にあったらすぐに警察へ連絡。そして弁護士に相談しましょう。

 

歩行者事故や自転車事故は自動車同士の事故に比べ、人身被害が大きくなりやすくなります。よって賠償金の金額も自ずと高額になるため、示談交渉におけるちょっとしたことでも金額に大きく影響します。

自動車同士の追突事故のような場合は、賠償金も高額になりにくいため、弁護士に依頼しても費用倒れのリスクも場合によってはありますが、歩行者事故、自転車事故の場合は、よほどの軽傷でない限り弁護士に依頼したほうが適切な賠償金を得ることができます

万が一事故に遭いましたら、治療開始前または治療開始後すぐに弁護士まで相談しましょう。

 

(調査先:警視庁統計データ)

 

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